生なま
← 生ビール
「火を通していない」という意味だった「生」は、こぼれて居酒屋の一杯目になった。
- 元の言葉
- 生ビール
- こぼれた部分
- 生
- 種類
- 部分抽出 / 単独使用 / 意味変化 / 意味縮小
- 現在の意味
- 生ビール、加熱・加工していないこと
- 信頼度
- 有力
意味の変化
- 加熱していない状態
- 生ビール
- 「生」が独立
- 生ビールそのもの
加熱・殺菌していない状態(性質) → 生ビール(モノ)
何からこぼれた?
「生」は「生ビール」の前半がこぼれた言葉です。よく聞く「生中」は「生ビールの中ジョッキ」を縮めた言い方で、「生」と「中」の二か所を組み合わせた略語です。ここでは、こぼれた部分である「生」を取り上げます。
元々どういう意味だった?
デジタル大辞泉は「生」を、食物などを煮たり焼いたりしていないこと、加熱・殺菌などの処理をしていないこととしています。「生ビール」は精選版 日本国語大辞典によれば「醸造したままで加熱殺菌をしていないビール」で、初出の実例として都新聞(1903年)の記事を挙げています。ビール酒造組合も、「生ビール」「ドラフトビール」を熱による処理をしていないビールと説明しています。「生」はビールの性質を説明する部分でした。
いつ独立した?
デジタル大辞泉は「生」の意味のひとつに「『生ビール』の略」を挙げ、「ビールは生がうまい」という例を示しています。デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典とも「生ビール」の項に「なま」と添えていますが、単独用法の初出の実例は示していません。単独で使われ始めた時期は現時点で確認できていません。
意味は変わった?
「加熱していない」という状態を表す語が、生ビールという特定の飲み物を指す名詞になりました。生魚も生クリームも「生」ですが、飲食店で「生」と言えばビールのことです。文脈によって指すものが絞り込まれた例と言えます。
今はどう使われる?
居酒屋などで「とりあえず生」「生ふたつ」のように注文するときに使われます。ジョッキの大きさと組み合わせた「生中」「生大」という言い方も広く使われますが、これらは辞書の見出しには見当たりませんでした(コトバンクの「生中」は「なまなか」の項です)。
なぜ定着した?
飲食店で注文する場面では、飲み物の話をしていることが前提になるため、「ビール」を言わなくても通じます。短く言える「生」だけで用が足りたことが、定着の理由と考えられます。
元の意味と今の意味
「生」は本来、食物などを煮たり焼いたりしていないこと、加熱・殺菌などの処理をしていないことを表す語。「生ビール」は、加熱殺菌をしていないというビールの性質を表す修飾部分だった。
- 生ビール飲食店などで「生ください」「とりあえず生」のように、名詞として生ビールそのものを指す。
- 加熱・加工していないこと本来の意味。「魚を生で食べる」「生の声」など。
タイムライン
- 1903年「生ビール」の用例。精選版 日本国語大辞典は都新聞(1903年3月28日)の「札幌麦酒株式会社〈略〉生ビールを発売する由にて」を初出の実例として挙げる。
- 1979年「ビールの表示に関する公正競争規約」が制定され、「生ビール」「ドラフトビール」は熱処理(パストリゼーション)をしていないビールの表示と定められる。
用例
とりあえず生ふたつ。
作例・生ビール刺身は生で食べる。
作例・加熱していないこと
関連するこぼれことば
出典
- 「生(なま)」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)コトバンク(小学館)(2026-10-04 閲覧)
- 「生ビール」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典)コトバンク(小学館)(2026-10-04 閲覧)
- ビールの豆知識「ビールの表示」ビール酒造組合(2026-10-04 閲覧)